ベトちゃんドクちゃんとして日本でも知られた、ベトナムの結合双生児・グエン・ドクさん。37年前に分離手術を受けたドクさんは現在44歳(2025年現在)となり、結婚して双子の父として穏やかな生活を送っています。しかし、兄のグエン・ベトさんは2007年に26歳の若さで亡くなりました。
なぜベトさんは早くに命を落としたのか。分離手術の影響なのか。それとも臓器が二人分なかったという医学的問題に原因があったのか。この記事では、その背景を丁寧に整理します。
結合双生児だった二人は“臓器の多くを共有していた”
ベトちゃんとドクちゃんは、胸から腹部が結合した「胸腹部結合双生児」でした。
ベトナム戦争の枯葉剤の影響です。
二人の身体は以下のように複雑に共有されていました。
上半身が二つ、下半身が一つのY型に繋がった形でした。
・肝臓は一つを共有
・循環器系の一部がつながっていた
・消化器系にも共有部分があった
・下半身には障害があり、両者とも歩くことは困難だった
特に重要なのは「肝臓と循環器系の負担が兄のベトさんに偏っていた」という点です。誕生直後からベトさんは慢性的な体調不良を抱えており、成長しても脳への障害、免疫力低下などの問題が続いていました。
つまり、分離手術以前から、兄の身体には大きな負担がかかっていたのです。
1988年、日本の医師団が中心となり分離手術が行われた
分離手術は1988年、日本の医師団を中心とした大規模な国際医療チームによって実施されました。世界的にも難易度の高い手術で、成功したこと自体が医学的快挙とされています。
しかし、分離後のベトさんは、元々の障害に加えて、分離によって身体のバランスが崩れ、より多くの医療ケアを必要とする生活となりました。ドクさんが比較的元気に見える理由には、もともと兄より臓器負担が小さかったという背景が関係しています。
兄のベトさんはなぜ亡くなったのか:死因の中心は「多臓器不全」

2007年、ベトさんは26歳で亡くなりました。公表された死因は「多臓器不全」。
多臓器不全とは、身体の主要な臓器が順番に機能を失っていく状態で、長年の慢性疾患や障害が蓄積して起こるものです。
医学的背景として考えられる要因は以下の通りです。
- 分離前から臓器の機能に重い障害があった
- 結合双生児としての身体的負担が兄の側に偏っていた
- 成長につれ障害が進行し免疫力が低下
- 車椅子生活による筋力低下に伴う合併症
- 呼吸器・循環器の慢性疾患が悪化
結論として、
「分離手術のせい」ではなく、生まれつき兄が背負っていた重い負担が成人後まで耐えられなかった
という医学的に自然な経過と考えられます。
ドクさんは兄の死をどのように受け止めているのか
現在44歳となったドクさんは、取材で「兄はいつも心の中にいる」と語っています。
幼少期は結合し寄り添うように生きてきたため、「兄の分まで生きることが自分の願い」と話し、今も深い絆とともに生きています。
ドクさんの現在の仕事・収入は?
ドクさんは健康に不安を抱えつつも、これまで 複数の形で社会参加し収入を得てきた と報じられています。
報道や現地メディアで紹介されている主な活動は次の通りです。
・チャリティ活動・平和教育イベントへの出演
・公園(平和記念公園:Vietnam Peace Memorial Park)での社会奉仕活動
・講演活動(スピーチ)
・行政機関や関連団体での事務職として勤務
・レストラン運営に携わった時期もある
・ドキュメンタリー番組(Vietnam TV・海外放送)の出演料
・講演活動
「どこか一つの職に固定」ではなく、
健康状態と家族の支えの中で、できる範囲の仕事を続けてきた というのが最も正確な理解です。
結婚は2003〜2004年頃で、現在は妻・双子の子どもと生活しています。

時系列まとめ(年齢入り)
出来事/年
1981年:ベトナムで結合双生児として誕生
・ベトさん:0歳
・ドクさん:0歳
(胸〜腹部が結合。臓器の一部を共有)
1988年:日本の医師団による分離手術(7歳)
・ベトさん:7歳
・ドクさん:7歳
(肝臓など共有臓器の分離。手術は成功)
〜1990年代:療養・リハビリの期間
・ベトさん:慢性的な障害が続く
・ドクさん:比較的元気に活動できるように
2003〜2004年頃:ドクさん 結婚
・ドクさん:22〜23歳
・双子の子どもが生まれる
2007年:ベトさん死去(26歳)
・死因:多臓器不全
・臓器負担・呼吸器障害・長期の身体的衰弱が背景
2010〜2020年代:ドクさん、家庭を持ち社会活動
・講演活動・平和活動などを継続
・健康は完全ではないため治療を続けながら生活
2025年現在:ドクさん44歳
・妻と双子の父として生活
・兄の分まで生きることを自身の願いとして語る
まとめ
兄の死因は生まれつきの重い障害が原因であり、分離手術との直接因果ではない。
結論として、次のように整理できます。
・兄の死因は「多臓器不全」で、生まれつき兄側に大きな負担が集中していた。
・分離手術は成功したが、もともとの障害が重かったため健康維持が難しかった。
・ドクさんは現在、家族を持ちながら複数の形で社会参加し生活しています。
・「兄の分まで生きる」という思いを胸に人生を歩んでいます。




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