沖縄出身のラッパー・Awich(エイウィッチ)は、数々の著名アーティストから絶大な支持を得て、今や日本を代表するアーティストとして大きな注目を集めています。
力強いラップ、沖縄の文化を背景にした独自の世界観、そして一度聞いたら耳に残る歌声。しかし彼女の魅力の根底には、音楽だけで語れない“壮絶な人生”がありました。
19歳でアメリカへ渡り、そこで運命の恋に落ち、娘を授かる。ところが夫は薬物売買に関わり、やがて銃撃によって命を落とす――。
その喪失を乗り越え、音楽で再び立ち上がった彼女の歩みは、多くの人の心を動かし続けています。
ここでは、Awichさんがどのように逆境を乗り越え、現在の地位をつかんだのか、その半生をたどります。
Awichとは ― 沖縄をルーツに持つ実力派ラッパー
Awich(エイウィッチ)本名:浦崎 亜希子(うらさき あきこ)は、沖縄県那覇市出身。
本名の亜希子と言う名前は「アジア大陸のように大きな希望を持つ娘に育ってほしい」とお母さんが名付けました。
亜・・・・亜細亜(アジア)・・・・Asian
希・・・・希み(のぞみ)・・・・・Wish
子・・・・子供(こども)・・・・・Child
そしてAwich(エイウィッチ)は、「亜希子」をもじった造語で英語にして命名したそうです。
生年月日:1986年12月16日(2025/12/8現在 38歳)です。
幼い頃から英語に興味を持ち、中学生の頃にはすでに海外の音楽や文化に強く惹かれていました。
高校卒業後、彼女は迷わずアメリカへの留学を選択。その行動力が後の人生を大きく変えるきっかけになります。
Awichというアーティスト名は、沖縄の方言で“愛”を意味する「A+witch(魔女)」の造語ともいわれ、パワフルな生き方そのものを象徴しています。
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— Awich (@Awich098) November 4, 2025
19歳でアメリカへ渡り、運命の出会い
2000年代初頭、19歳のAwichはアメリカ・アトランタに留学します。
ヒップホップ文化が濃く根付くこの地で、彼女は一人の男性と出会います。
当時、大学在学中の19歳の時に14歳年上のアメリカ人男性と知り合い、お互いに入れたタトゥーの話をきっかけにして、距離を縮めてゆきます。
後に夫となるアメリカ人の青年で、二人は強く惹かれ合い、ほどなく結婚。娘も誕生しました。
言語も文化も違う異国の地で、家族を築きながら音楽活動を続ける――。
若くして母となった彼女にとって、アトランタでの生活は刺激と挑戦に満ちた日々でした。
夫が薬物取引に関わり、銃撃で死亡
しかし、幸せは長く続きませんでした。
2008年に結婚を果たすのですが、なんと結婚後に夫の裏の顔が分かったのです。
夫は「プッシャー」(ハスラー)と呼ばれる「麻薬密売人」で裏社会ではかなり大物だったようです。
Awichさんが妊娠5ヶ月の頃には「夫」は刑務所に収監されていたそうです。出所後も命を狙われる危険に再三遭っていたようで、結果的に2011年に「銃殺」され、この世を去ることとなっています。
突然の死。まだ幼い娘。
遠く離れたアメリカで、3年間の結婚生活で若くして夫を亡くしたAwichは、深い悲しみに沈みました。
この時、彼女は「生きている意味すら分からなくなった」と語っています。
「絶対に音楽をやめるな」という生前の「夫」との約束が彼女を突き動かすこととなりました。
人生の土台が一気に崩れ、光が見えない日々。それでも母として娘を守るため、音楽を続けるため、彼女は故郷・沖縄へ帰る決断をします。
沖縄へ戻り、ひとりで子育てと音楽に向き合う
沖縄に戻ったAwichを待っていたのは、シングルマザーとしての現実でした。
娘を育てながら音楽を続けるのは簡単ではありません。生活のため働きながら、夜に曲をつくり、少しずつ作品を発表していきました。
失った夫への思い、沖縄という故郷の文化、母としての葛藤――。
彼女の楽曲には、この時期に抱えた混乱や痛みが色濃く刻まれています。それが多くのリスナーの心を打ち、徐々に評価が高まっていきました。
“逆境”が力に変わる ― Awichの言葉
Awichはインタビューで繰り返し「痛みを否定しない」と語っています。
彼女にとって夫の死は乗り越えようとして忘れるものではなく、音楽の中で昇華し、力に変えるもの。
実際に、彼女の多くの楽曲には悲しみと再生がテーマとして刻まれています。
「暗闇を見たから、光の強さが分かる」
「どんな過去でも、自分の物語にして歩いていける」
こうした言葉に、ファンが強く共感する理由があるのです。
日本を代表するラッパーへ
2010年代後半からAwichの名は多くの音楽ファンに知られるようになり、2020年以降はメディア出演も増加。
海外アーティストとのコラボやフェスの出演も相次ぎ、女性ラッパーとして異例の注目度を獲得しています。
強さとしなやかさ、悲しみと希望をすべて抱えて前に進む姿は、唯一無二と言っていいでしょう。
まとめ
Awichの人生は、決して平坦ではありませんでした。
夫を銃撃で失い、絶望の中から沖縄へ戻り、ひとりで子育てをしながら音楽に向き合い続けた日々。
しかしその痛みを抱えたまま強く生きる姿が、今の彼女の魅力を形づくっています。
逆境に押しつぶされず、自分の人生を物語に変えて前へ進む――。
Awichが発するメッセージは、多くの人を勇気づけてくれます。
今後の活躍にも、ますます目が離せない存在です。


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